皆さんに聞いて頂きたいテープがあります。(テープを流す)
「お母さん」と聞こえませんか。鳥やイルカの鳴き声ではありません。秋芳洞に住んでいる、コウモリの赤ちゃんの鳴き声です。コウモリの赤ちゃんは「お母さん」と鳴くんです。本来は超音波ですから「ピッピッピッ」と甲高い鳴き声ですが、テープの回転数を落とすと「お母さん」と聞こえます。
コウモリは哺乳類です。お腹を痛めて、赤ちゃんを産むんです。天井に何千匹も、一緒に群がっているんですが、お母さんには何千匹いても、自分の赤ちゃんがわかるんだそうです。餌をとるために、洞窟から出て、再び戻ってくるとき、真っ直ぐ自分の赤ちゃんのところへ飛んでいきます。そのとき、お母さんを呼んでいる赤ちゃんの鳴き声が、この「お母さん」です。
私は毎年、大分県の九重高原で小学生を対象とした4泊5日のキャンプを行っています。2日目はいつも、炎天下、20キロのハイキング、そして夜は野宿です。
もっとも辛くて「家に帰りたい。お母さんに会いたい」と思っているとき、夜の行事で、このテープを聞かせてみました。何と、子どもたちは大泣きでした。「お母さん」という響きがいいんです。
私の長男が幼稚園のとき、運動会で園児50人が、頭から米袋を被って、校庭を走り回り、お父さんが自分の子どもを捜すというゲームがありました。まるで私の子どもに対する愛情を試されているような気がしました。結局、5人の袋をはぐって、全部ハズレでした。
観客席に戻ったときの、妻の目線の冷たいこと。「お父さんはなぜ、わからないんですか。私は初めからわかっていた」と言われてしまいました。10月10日、自分のお腹の中で育て、命がけで生んだ人はすごいと思いました。
子どもに対する愛情の深さは、父親は残念ながら、母親には勝てません。