私の長男は、来年成人式を迎えますが、成人式のたびに、ある男の子のことを思い出します。
十五年くらい前、小野田市内の中学校が非行問題で荒れた時期がありました。先生は生徒から殴られ、ガラスも百五十枚割れました。当時の総番長は、通称「花ちゃん」と呼ばれていた生徒で、身長百八十センチ、髪の毛を金髪に染め、背中に龍の絵の入った学ランを着ていました。
花ちゃんは私の塾生で、小学五年から預かった子供でした。いい子だったのですが、中学校に入ったとたん、非行グループと付き合うになり、二年生になってからは、学校で堂々とタバコを吸い、非行問題を繰り返していました。「何とかしよう」と思い、一生懸命取り組んだのですが、三年生の初め、ついに塾を止めてしまいました。
その彼が、中学校を卒業して、五年ぶり突然、塾にやってきました。
七月十五日でした。「こんにちは」という声を聞いて、玄関に出てみると、白いポロシャツを着た青年が立っていました。初め、誰かわからなかったのですが、ニヤッと笑った瞬間「花ちゃん」だと気づきました。
「どうした」と問いかけると、恥ずかしそうに背中から、箱を取り出して「先生、お中元を持ってきました」と笑顔を見せました。こういうのを「お礼参り」と言うんですね。コーヒーの詰め合わせが入っていました。
帰るときは、玄関の外まで見送りました。彼が五、六歩、歩いた背中に向かって「真面目になったなあ」と声を掛けると振り向いて「先生、俺いつまでも、母ちゃんには心配かけられんから」と笑顔を見せました。
年が明けた一月十五日、今度は突然、お母さんが「息子が成人式を迎えました。うれしくて、報告に来ました」と塾に来られました。「中学校を卒業して、三年くらいは、遊んでばかりいたのですが、その後、建設会社に勤め、何と、去年は一日も休まずに働いて、年末にはお父さんのために、大きなワイドビジョンのカラーテレビを買ってくれたんですよ」とうれしそうな顔をされました。話題が中学時代の話になると、お母さんの目は輝いていました。
「先生、息子は本当に悪かったですよね」と悪かったことをまるで自慢しているような話振りでしたが、花ちゃんが中学生の頃のお母さんは、花ちゃんに投げられ、あばら骨を三本折って、一ヶ月も入院したことがあり、憔悴しきっていました。
そのお母さんが、当時のことを懐かしそうに話される姿を見て、子育ては、苦労はあるけれど、だからこそ喜びも大きいのだという思いを強くしました。
以来、非行少年と接するたびに「将来、親を感動させよう」と頑張っているんだなあと、思うようにしています。
青少年に関わる事件が多発していますが、「親子の絆」の大切さ必要性を強く感じます。